December 5,1996

三澤茂計




中央葡萄酒株式会社 代表取締役
1948年 48歳 山梨県勝沼生まれ

 ワインの1年はサン・ヴァンサンの祭りから始まる。勝沼のぷど うの丘に登る坂道に向いたサン・ヴァンサンの石像を目指し、毎年 1月22日、ぷどうの剪定も丁度この頃になり、ワイナリーのオー ナー、農家、まちづくりグループの女性たちが集まる.豊饒への祈 りの後、持ち寄ったワインと荻野ハンナさんの手料理で小宴が開か れる.出席者達は今年のぶどうとワインはこうでありたいと、自々 その思いを胸に秘める。

 遠景の山梨を囲う連山の神々しいまでの輝き見せる稜線は縄文祭 器の縁に重なる.勝沼から出土したワインの発酵器とも云われる有 孔鍔付土器の穴さえも、一気に視界を広げる笹子トンネルであり、 空気の流れを引き起こす。

 悠久の1万年。1000年前の甲州種ぷどう伝播。100年前ワ インとぷどうづくりに挑戦した高野・土屋こ青年の渡仏。そして、 10年前甲州種ぷどうを守り伝える勝詔ワイナリークラブの結成。 はるかな時の流れが、忘れ去る精神を深く高く呼び戻す。

 優れた果実は健全な大地から育まれる考えを思い立ち、大地を汚 さず、美しい畑をテーマとし、1989年から草生栽培と土壌菌を 利用した農法による、醸造専用品種二品種の垣根仕立てを始める。  契約栽培のシヤルドネ種は、未だ自然農法の域に達してはいない が、甲州辛口としてやっと着ぎ着けたシュル・リー製法と100樽 を越す周五郎のヴァンの樽熟成の方法、の経験を生かし、良質のぶ どうから、深く強い風味を持つ1994年キューベ・スベリュール が誕生した.つくり手として最大の喜びである。が、しかし、付近 の里山で採れる山菜・きのこの料理となると、素直に甲州辛口を選 ぷ。単に贅沢を避ける為の選択では無く、何故か心がホッとするの である。


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