余話。その2
                                                  
ワインづくりが技術を獲得するまで(6)
-パスツ−ル以降−
 
 
 余談を一ついれます。
 ドイツにはアイスヴァインというトロッケンベーレンアウスレーゼ(貴腐ワイン)と並び称せられる稀少性の高いワインがあります。価格もたいへん高い。これは病気に侵されていないブドウを厳冬期まで収穫をせずに畑において寒波の襲来を待つ。気温が下がってブドウの果実がシャーベット状に凍結した時、すかさず圧搾機で絞って濃密な果汁を分離するのです。寒波がうまく到来するかどうかが成否の分かれ目で、ブドウの成熟程度や畑の由緒なんて、本来、どうでもよいのです。テクノロジーが付加価値を高めるという発想が、ドイツでは育ちやすい事情を垣間見る思いがします。
 さて、1960年代、技術革新はどのようにして始まったのか。まず、醸造機械の新鋭化が進みます。それも中小ワイナリーで、単位操作ごとに個別に装備できる小型の機種が開発され、それらが一つのシステムとして機能すれば、ワインの新しいコンセプトとなるフレッシュ・アンド・フルーティの酒質がつくり出せるところまで、設備における質的性能は向上しました。
 それらを列記しますと−。
  ・除梗破砕機。当時は破砕後の果醪から梗を除去する型式が多く、梗を分離せずに
次の工程へ進むことも珍しくありませんでした。
  ・空気圧式圧搾機(ヴィルメス)。一般にはまだ堅型バスケットプレスの時代で、フラン
スではヴァスラン型が普及しはじめたところです。
  ・果汁処理用遠心分離機
  ・プレート式熱交換機
  ・濾紙濾過機
  ・冷凍機。果汁の低温保存、定温発酵、ワインの冷凍濾過など、広範囲に利用され、
酒質向上に大きく頁献しました。
  ・タンク。木製容器やコンクリートタンク、鉄タンク(エナメルライニング)の時代から
FRP(ガラス繊維強化樹脂)やステンレスへ材質が移行し始めます。

  こう見ると、ワイン醸造の重要な工程は今日と同じレベルに、この時期、すでに到達していたことがわかります。要は、これらをいかに利用するかですが、その際、ドイツワインの大部分が白ワインであったことは、非常に重要な意味を持っていたのでした。


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